すべての人の性の健康のために ― 潤滑剤という選択肢

知っているようで、意外と知らない「潤滑剤」。
どんなもの? どんなときに使うの? という声も多く聞かれます。

ここでは、世界保健機関(WHO)がどのように潤滑剤を位置づけているのか、国際的な視点からその内容をご紹介します。

性の健康と潤滑剤

世界保健機関(WHO)は、性の健康(sexual health)を次のように説明しています。

性の健康とは、病気がないというだけではなく、
性に関わる身体的・感情的・精神的・社会的な幸せのことです。
安全で快適な性的経験を楽しむことができ、
強制や差別、暴力がない状態を含みます。

― 出典:World Health Organization, Sexual health: working definitions. 2006

性の健康を守るためには、
正しい情報や、安心して使えるツールにアクセスできることが大切だとされています。

潤滑剤とは

潤滑剤(personal lubricants)は、性的な活動のときに使われる液体やジェル状の製品です。
WHOは、潤滑剤を「性の健康を支えるセルフケアのひとつ」として紹介しています。

「潤滑剤は、さまざまな年齢、性別、性的指向の人が
親密な関係のなかで快適さを高めるために使うことができます。」

― 出典:WHO recommendations on self-care interventions: availability of lubricants during sexual activity. 2021

潤滑剤は、医療機関や薬局などで処方なしで入手できる製品として多くの国で広く利用されています。

人々が潤滑剤を使う理由

WHOがまとめた研究によると、人が潤滑剤を選ぶ理由はひとつではなく、次のようにさまざまです。

・ 乾燥や摩擦をやわらげたい
・ 安心して、より快適に過ごしたい
・ パートナーとの関係をより楽しみたい
・ コンドームが乾きにくく、使いやすくしたい
・ 新しい感覚を試してみたい

― 出典:WHO, Systematic review on lubricants, 2021

このように、潤滑剤は「特定の人のため」ではなく、誰もが性の健康を大切にするために使うことができる製品と考えられています。

性の健康を支えるツールとして

WHOは、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)という国際的な健康推進の取り組みの中で、潤滑剤を「思春期から高齢期までの性の健康とウェルビーイングを支える介入のひとつ」としています。

― 出典:WHO UHC Compendium, “Care of sexual functioning and well-being”. 2021

まとめ

潤滑剤は、世界的には「性の健康を支えるためのセルフケア製品」として位置づけられています。
年齢や性別に関わらず、誰もが安心して自分らしい性のあり方を大切にするためのひとつの選択肢として活用されています。

【出典一覧】
World Health Organization. Defining sexual health: Report of a technical consultation on sexual health, 28–31 January 2002, Geneva. WHO, 2006.
World Health Organization. WHO recommendations on self-care interventions: Availability of lubricants during sexual activity. WHO, 2021.
World Health Organization. UHC Compendium: Care of sexual functioning and well-being. WHO, 2021.